時代によってしなやかに変幻できる女性像を追って

 クルチアーニ、キートン、バルバなどイタリアのクラフツマンシップがつまったブランドを、日本に広めたセレクトショップがSTRASBURGO(ストラスブルゴ)である。1990年に大阪・心斎橋で産声をあげたストラスブルゴは、1997年の東京・南青山の出店を皮切りに、銀座や六本木、神戸、京都とその数を増やし、2007年に名古屋初のショップをミッドランドスクエアに登場させた。
 南青山店がスタートしたころ、ストラスブルゴはオンリーメンズのショップだった。レディスができたのは2000年だという。その立ち上げから現在までウィメンズ部門に携わってきたのが植原ほのさんだ。

— ウィメンズはどのような形でスタートしたのですか?

 「当初は、クルチアーニやキートンといったメンズでの取り扱いがあったブランドを店舗の片隅に置いていました。それらを男性がお連れの女性に薦めてくれるような感じでしたね」
 しかし、植原さんはそれだけでは少しつまらない、と感じるようになっていく。メンズで取り扱いのあるブランドは、生地にこだわり、職人の匠によって作られる。シンプルなデザインのなかに、大量生産にはない上質さが輝くアイテムが多い。それらでコーディネートすると女性には少し華がないように植原さんは思っていくのだった。

— ストラスブルゴのウィメンズの特徴を教えてください。

 「女性ならではのアティチュード(姿勢)、それは美しくなければいけないと思うのです。女性には男性にはない妖艶さや色気が必要だと思います。もちろんそれは単純に肌を露出すればいいというようなものではありません。我々の顧客は知的レベルが非常に高く、生活にクォリティを求めます。目立ちたい、トレンドを追いかけたい、というよりも、ご自身の良さがにじみ出るような服をお求めになるのです」

— とはいえ、ストラスブルゴならではの定番ブランドも用意はあるのですよね?

 「ベーシックなアイテムは、例えばバルバの白シャツやクルチアーニのニット、キートンのジャケットなど価値あるブランドのご用意があります。ただし、そのような定番アイテムには、女性ならではの色気を、サイモン アルカンタラのようなジュエリーで加えることも忘れないようにしたいですね」

— 日本人に似合うファッションとはどのようなものですか?

 「日本人の多くは欧米人と比べて顔立ちが幼いと思います。かわいい顔立ちに、かわいい服という組み合わせは甘くなりすぎるのです。優しい、無垢な顔立ちには、逆にクールな服のほうが似合う、つまり中和されるのです」

— 植原さんが理想とする女性像とは?

 「時代によってしなやかに変幻できる女性って素敵ですよね。一昔前は男性の後ろについていく女性が素敵とされましたが、今は違う。出すぎず、後ろでもなく、男性と対等であり、さらにしっかりと寄り添うような女性像を思い描きながら、日々過ごしています」

— どのようにして、そう考えるようになったのですか?

 「子供のころ、クリスマスに家族でお洒落して、レストランへディナーに行くというのが我が家の習慣でした。その日のために服を買いに行くところから始まって、ゲストとして過ごすレストランでの高揚感や楽しさを今でも覚えています。まだ幼かったのですが、そこではひとりの女性として見られました。また、母は美術が好きで、名画がまとめられた書籍を私と弟によく読み聞かせてくれました。これは美しい、これはそうではない、という価値観や美への意識が自然と身についたように思います」

— その体験が現在活かされているのですね?

 「ストラスブルゴを訪れると、洗練されたギャラリーにいるような気分になっていただきたいのです」

— 定番的なクルチアーニのニットから、最新のモードまでが並ぶ。最近、気になるブランドは?

 「ニナ リッチは1932年にイタリア人がパリで設立したメゾンですが、2019年に新たなデザイナーとして、ルシェミー・ボッターとリジー・ヘレブラーを抜擢しました。ふたりはボッターという若い世代から支持を集めるストリート・ブランドを手掛けていて、当初はこの老舗には似つかわしくないと考える人が多かったのです。が、いざコレクションを発表すると、その考えが間違いだったことにみな気づかされました。美しく上品でいながら、アティテュードはストリート。モードの加減が絶妙なのです」

— 植原さんがお召しになっているシャツもニナ リッチの春夏物ですね。

 「このシャツもご好評をいただき、すでに完売となってしまいました」

— 次なるシーズン、秋冬物で注目すべきはどんなものなのですか?

 「キーワードとしては、マスキュリン(男性的)、センシュアル(官能的)、トラッド(定番的)、アニマル、レース、カジュアル。それらをストラスブルゴらしく表現しています。たとえば、レースは女性らしさの象徴ですが、それを単に甘く着こなさないようにするとか、アニマルだけど品があったり。センシュアルなトラッドの提案も。意志のある、凛とした女性に共感してもらえれば嬉しいですね」

— 朝、メディテーションを行うのがルーティンだと聞きました。

 「ファッションは世を映す鏡だと思います。メディテーションを行うことで世の中のことを考えるというよりも、感じることができます。今はどんな時代なのか。そこで輝く女性はどういう人なのか。考えるよりも感じることができるのです。瞑想のなかで言葉がいくつか浮かんできて、その言葉を深掘りしていくと我々、ストラスブルゴが進む方向が見えてくるのです。本当に心を動かすもの、人生に響くものだけをご用意したいのです」
 知的でクールだけれど、色気も決して忘れない。女性ならではの魅力が増すストラスブルゴをまとってみたい。

Profile

ストラスブルゴ
ウィメンズ エグゼクティブ
スーパーバイザー

植原 ほのさん

Hono Uehara

1971年、北海道生まれ。大学卒業後、建材輸入会社で3年間勤務。その後、1997年にストラスブルゴを運営する「リデア カンパニーリミテッド」に入社。2000年からストラスブルゴ ウィメンズのディレクションを手掛ける。現在はウィメンズ エグゼクティブ スーパーバイザーとして、バイイングを担当するほか、銀座店で顧客とも日々触れ合っている。