— ミッドランドスクエア シネマは合計14スクリーンを備えています。名古屋駅エリアの映画館として、このスケール感をどのようにお考えですか?

  ミッドランドスクエア シネマ1は2007年、ミッドランド スクエアのオープンと共に誕生しましたが、ちょうど都市型シネマコンプレックスが成熟した頃でした。映画を観るだけでなく、非日常の世界を楽しむエンターテインメント空間という考え方で作りましたが、それはミッドランド スクエアのコンセプトと一致しており、これからの映画館のあり方を示唆するものとして成功したと思っています。ミッドランドスクエア シネマ2には、新たに7スクリーンが出来ましたが、こちらは若年層のお客様が好みそうな映画を主に上映しています。本館の1がアート系でアダルトだとしたら、2は若年層でアニメ系などを幅広く網羅しています。そういう棲み分けは、合計14スクリーンというスケール感があるからこそ、できているように思いますね。同時にこの棲み分けによって、お客様がスクリーンに愛着を持っていただいているようです。あの映画はここのスクリーンで観たな、という感覚ですね。
 そして名古屋駅の映画に関するポテンシャルは14スクリーンだけでおさまるものじゃありません(笑)。映画というコンテンツだけでも足りないくらいで、映画以外のもの、例えばライブビューイングといった分野まで含めて考えたら、もっともっとスクリーンが欲しいのです。映画以外のスクリーン活用がどんどん育っているし、広げていくべきだと思います。中部地域のターミナル駅として、名古屋駅が映画を通じて発信していくべきものは、たくさんありますね。

— 2019年12月に、ミッドランドスクエア シネマに導入された“ドルビーシネマ”の魅力について、教えていただけますか?

 ミッドランドスクエア シネマ1のスクリーン5が、日本で5番目のドルビーシネマとして誕生しました。現在、世界的に最先端と言われているのが、IMAXとドルビーシネマです。IMAXは大きなスクリーンであることなどそのサイズにこだわってつくられたもので、非常に圧倒感があります。一方ドルビーシネマは、徹底的に質にこだわってつくられています。「ドルビービジョン」と呼ばれる高輝度、ハイコントラストの映像と「ドルビーアトモス」という立体音響システムで、驚くような高品質の映画体験に導きます。中でも音については、スクリーンの左右と天井に無数のスピーカーが配置されており、サラウンド効果が素晴らしい。お客様に伝わっていく音が細部まで研ぎ澄まされ、まるで自分が映画の中にいるような感覚になります。
 ちなみに私が映画を観る時は、必ず一番前の席に座って、視界が全てスクリーンになるようにして映画の世界に没頭して観ています。ところが、ドルビーシネマなら、一番前である必要がなく、どの席に座っても、立体感のある音響のおかげで臨場感がすごい。スクリーンの周りも真っ黒になっていて余分なものが視界に入らないので、映画に没頭できる環境が整っています。映画に集中してその世界に入り込むことを“没入感”と呼んでいるのですが、ドルビーシネマはまさにその没入感が素晴らしい。是非体験していただきたいと思います。

— 自宅でも映画を楽しみたい方に、オススメの作品を教えてください。

 仕事を離れてもやっぱり映画が好きで、映画館に行く以外に自宅でDVDをしばしば鑑賞しています。個人的な趣味になりますが、オススメするとしたら…。もしお一人でゆっくり観るなら、「ある日どこかで」(※1)、「ミッドナイト・イン・パリ」(※2)、「汚れなき悪戯」(※3)。味わい深いお話なので、じっくりその世界に浸れるのでいいかと思います。家族で一緒に観るなら、「ローマの休日」(※4)、「言の葉の庭」(※5)。お子さんと一緒なら「バック・トゥー・ザ・フューチャー」(※6)、「ホーム・アローン」(※7)、「ビッグ」(※8)などがオススメです。いずれもDVDになっているかと思います。AmazonやNetflixなどでも探してみてください。

※1「ある日どこかで」
SFラブストーリー。興行成績はふるわなかったものの、コアなファンによって好んで視聴されており、公開後40年を経ても熱烈なファンがいることで知られている。
※2「ミッドナイト・イン・パリ」(※6)
ウディ・アレンが脚本と監督を務め、第84回アカデミー賞で脚本賞受賞。主人公の脚本家が、現代のパリと1920年代のパリを行き来する。
※3「汚れなき悪戯」
1955年のスペイン映画。修道院で育てられた少年が主人公。少年がキリスト像と会話をする不思議な話は、イタリアで起こった民間伝承が元になっている。
※4「ローマの休日」
ローマを舞台にした新聞記者と王女の切ない恋物語。グレゴリー・ペックとオードリー・ヘップバーンが演じたあまりに有名な作品であり、名作中の名作。
※5「言の葉の庭」
新海誠監督が「君の名は」でブレイクする前の作品で、シーンの8割が雨のシーンで構成され、叙情的で美しい映像が印象的。
※6「バック・トゥー・ザ・フューチャー」
1985年公開当時は、フューチャー現象と呼ばれるブームが起きるほど大ヒット。タイムマシンによって過去へと旅をするお話。
※7「ホーム・アローン」
1990年のアメリカ・コメディ映画。当時10歳だったマコーレ・カルキンの出世作として有名。ひょんなことから家族のいない家で一人暮らしをすることになった少年が主人公。
※8「ビッグ」
トム・ハンクス、ゴールデングローブ賞主演男優賞受賞作品。一夜にして少年から大人になる主人公は1週間後に会社の副社長になる。コメディ映画ではあるが、心温まるストーリー。

— 名古屋駅でさらなる拡大を目指すとのことですが、どんな映画館を作っていきたいですか?

 映画は評論家によって評価されますが、その評価軸とは関係なく、制作している人は魂を込めて素晴らしい作品を作ろうと思って挑んでいます。我々は、多くの人の手と気持ちがつまった作品をお預かりするわけですから、その作品をどう提供していくのか、作品の命を昇華させてあげるか、ちゃんと考えて丁寧に発信していかなければ。制作者の気持ちをしっかりと汲んで、映画の情熱を灯し続けていかなければいけないと思っています。
 私が20代の頃に観た映画はアイデアに満ちていて、こんなに素晴らしいアイデアが出てしまっては、もうこれから先、これ以上新しい映画など生まれないだろう、と思っていました。ところが、アイデアというのは枯渇することなく、泉のようにこんこんと湧き出るものであることが、以降の数え切れないほどの作品との出会いで証明されました。映画への情熱も尽きることなく、私の中で燃え続けています。映画館という空間が、新しい感動をもたらす場所となるよう目指していきたいと思っています。

Profile

中日本興業株式会社 代表取締役

服部 徹さん

Toru Hattori

ミッドランドスクエア シネマを手掛ける中日本興業株式会社の代表取締役。中日本興業株式会社は、2020年に営業開始して65年目を迎えた。戦後間もない名古屋駅に、映画の街づくりを推進してきた企業スピリットを受け継ぎ、2027年のリニア開通に向け、さらなる賑わいを創造する企業の代表として、映画にあたたかな視線を向けている。