— 音楽との出会いは洋楽好きな兄の影響

音楽との出会いは、物心がつくよりも前でした。3歳年上の兄の影響で、小学生の頃からビートルズを聴き、ラジオから流れる洋楽をカセットテープに録音していたというBONNIE PINKさん。聴くことと同じくらい、歌うことも大好きだったそうです。
「保育園の頃、ピンク・レディーを耳コピーして、意味もわからず、おもちゃのマイクを持って、こたつの上に立って『ペッパー警部』を歌っていました(笑)。歌いたいという欲求は、その頃からあったんだと思います」。とはいえ、歌手を目指していたわけではありません。音楽はあくまで「最大の趣味」。10歳頃から詩を書き、高校時代にはジャネット・ジャクソンのダンスをコピー。マライア・キャリーの高音に挑戦して、布団をかぶって声を出していたこともありました。

— 最大の趣味が転機となる瞬間

転機が訪れたのは大学時代です。友人に誘われて参加しようとしていたバンドの集まりに、音楽プロデューサーのS-KENさんが同席していました。そこで声を掛けられ、女性ボーカリストを集めたコンピレーションアルバムに参加。その後、ソロデビューの話が舞い込みます。
デビューに向け、さまざまな作曲家から曲が集められました。しかし、その中に「歌いたい」と思える曲がありませんでした。「それを正直に伝えたら、『そんなに嗜好がはっきりしているなら、自分で書けるんじゃない?』と言われて。作曲なんてしたことがなかったんですけど、ピアノは習っていたので、鍵盤を押さえながら鼻歌で作ってみたんです」。
それまで別々に楽しんでいた「詩を書く」「メロディを作る」「歌う」が、ここでひとつになりました。最初に作ったデモは4曲ほど。その中には、後に代表曲となる「Heaven's Kitchen」も入っていました。
1995年、アルバム『Blue Jam』でデビュー。当時はまだ大学生。京都の自宅から大阪の大学まで往復4時間かけて通いながら、その合間に東京でレコーディングする生活を送っていました。「親からは学業優先と言われていたので、絶対卒業しなきゃという緊張感がありました。自分がどれだけラッキーな状況にいるのかも、あまりわかっていなかったんです」。

— BONNIE PINKの世界が大きく羽ばたいた

その後の大きな出会いが、スウェーデンのプロデューサー、トーレ・ヨハンソンでした。洋楽好きで、他アーティストのCDのスタッフクレジットまで細かくチェックしていたBONNIE PINKにとって、以前から気になる存在でした。彼とともに作り上げた「Heaven's Kitchen」は、BONNIE PINKの世界を大きく広げました。
「骨組みは私が作ったものですが、アレンジはトーレならでは。間口を広げて、いろんな人を惹きつけるものにしてくれました」。最初は二人だけでセッションし、そこにドラマーやギタリストが加わっていきます。さまざまなアイデアが積み重なり、一曲が完成していく。その過程で音楽制作の楽しさを実感していきました。
そして2006年、もうひとつの代表曲「A Perfect Sky」が誕生します。資生堂の日焼け止めのCMソングとして、すでに完成していた蛯原友里さん出演の映像を何度も見ながら、15秒、30秒という尺に合わせて書き下ろしました。放映が始まると「あの曲は誰?」と話題になり、一曲として完成させてリリース。
今では夏の定番曲となり、近年はTikTokを通じて若い世代にも広がっています。「娘の同級生が、私の曲だと知らずに『A Perfect Sky』で一生懸命ダンスしていると聞いたりして。世代を超えて楽しんでもらえているのは、すごくありがたいですね」。

— デビューから30年を経て新たなステージへ

結婚、出産を経て、現在は母としての時間も大切にしています。子供が学校に行っている間に歌や楽器の練習をし、夕方から寝るまでは仕事モードを横に置く。宿題を見たり、翌日の準備について話したり、ときには一緒に歌ったり。娘との日常は、音楽にも新たな視点を与えました。
「子供にとっては、毎日がすべて新しく、期待や希望でしかない。それを毎日見ていると、終わっている場合じゃないなって思うんです。自分次第で、いくらでも再出発できるんだって」。
デビューから30年。変わらず大切にしてきたのは、自身の直感。「違うと思ったらそっちには行かない。それがなければ、ソロアーティストである必要もないと思うんです。私の場合、日々の暮らしの延長線上に音楽活動がある。それを受け入れてくれている仲間に感謝ですね。」あくまでも自然体。それがBONNIE PINKの魅力であり、曲作りにも生かされているからこそ、聴く人を魅了する。
音楽を仕事にしようとは考えていなかった少女が、さまざまな出会いに導かれ、自らの直感を信じて歩いてきた30年。母となった今も、新たな未来が広がっています。