— 一年中クリスマス用品を扱うショップの成り立ちとは?

「私の義父ウィルヘルムがそのルーツです。1963年のクリスマス直前に、義父母は親しいアメリカ人将校の家族を自宅に招待しました。アメリカ人将校は、ドイツの伝統的なクリスマスのおもてなしにとても感激したそうです。中でも、聖家族のオルゴールに非常に興味を持っている姿を見て、義父は彼にそのオルゴールをプレゼントしたいと考えました。
翌日、街じゅうのお店を探しましたが、すでにクリスマス用品は姿を消していた。そこで義父は問屋さんに交渉したのですが、最低でも10個は購入してくれないと、という答えだったそうです。1個は将校にプレゼント、残りの9個を慈善バザーで販売したことが評判を呼び、くるみ割り人形やピラミッドなど伝統的なクリスマスの飾りを仕入れて、週末に販売するウィークエンドビジネスを義母が切り盛りしたのです。そこで義母の名前をとって『ケーテ・ウォルファルト』と名付けました。
このユニークなアイデアが、その後家族が越してきたローテンブルクを“クリスマスの街”と観光客に認識させ、やがてその名は世界中に知られるようになりました」

— どんなアイテムがあるのでしょうか?

「木製のものを中心にドイツでずっと継がれてきた伝統的なものをラインナップしています。ロゴマークにもなっているくるみ割り人形をはじめ、香炉人形、クリスマスツリーオーナメント……キラキラした輝きをまとっていたり、カラフルな彩りは『ケーテ・ウォルファルト』ならではといえるでしょう。これらのデザインはすべてオリジナルです。木製、ガラス製、一つひとつが職人による手作りで、とてもしっかりしています。きっと何年も使い継いでいただけると思います」

— どのようにしてドイツでこれらが生まれたのでしょうか?

「当時は東ドイツに位置していたエルツ山地地方は鉱山の街でした。坑夫たちは冬の朝早く、まだ太陽が上がる前に仕事に出かけ、帰宅する時はすでに星空になっていたと言います。つまり一日中太陽を見ないで過ごすことも多かったのだそう。エルツ山地地方のクリスマスが光に包まれて輝いているのは、寒いクリスマスの夜を心温かく過ごすための人々の願いであり知恵だったのでしょう」

— 丁寧な木製の手仕事は、ものづくり中部のスピリットにも通じるものがありますね?

「今は何でもネットで手に入る時代。でも、だからこそ、時代を超えて伝えられたものの価値への目利きがとても大切になってくると思います。ドイツはクリスマスツリーができた国。そして手作りの温かさをとても大事にする国。トヨタ自動車のお膝元のミッドランドスクエアですから、昨年に出店した際にも通じるスピリットがあると感じました。ショップにお立ち寄りいただいたら、ゆっくり商品をご覧になって、職人の手仕事にも目を向けていただきたい。そしてクリスマスのお祝いに、気持ちを込めて選んでいただきたいです」

— 今年は新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれたとのことですね?

「ヨーロッパは本当に深刻な状況で、今、本店のみ営業、その他の支店は週末だけの営業となっています。外国人観光客の方がいないですから。ドイツのクリスマス・マーケット自体もほぼすべて中止となっています。
日本での開催も迷いましたが、日本人の生活様式や堅実さのお陰なのか、ヨーロッパに比べて感染者数が少ないとのことでしたので、社長である主人からも「日本は大丈夫なのではないか? 何もかも中止にしていたら、元気がなくなってしまうよ」と応援してくれたので開催することにしました。
日本人は街を歩いているほとんどの人がマスクをしているので驚きました。みんなで協力して収束しようと頑張っている、素晴らしいですよね。
ヨーロッパ旅行に行けなくて残念に思っていらっしゃる方にもぜひここで楽しんでいただき、少しでもハッピーになっていただけたらと思います!」